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2020年 特別企画展​ 未来圏から!

​オンライン・ミュージアム

​7月25日(土)- 8月19日(水)

諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか

新たな詩人よ
雲から光から嵐から
透明なエネルギーを得て
人と地球によるべき形を暗示せよ

 宮沢賢治「詩 ―生徒諸君に寄せる」より

※作品の販売は終了いたしました。

コロナウィルスの危機を超え、パンデミックの最中でも、
私たちは生きていかねばなりません。あらゆる僥倖から遠くあっても。
「今、伝えなければ」という想いを皆様と共に。
今を生きる私たちが体験したことがない今日、明日・・・全ての命のありようを問うために。

約3か月の準備期間を経て、いよいよ始まりました「未来圏から!」。
86名の国内外の作家たちに、コロナ禍の只中、未来へ向けてのそれぞれの思いを表現していただきました。

初めての試みとしてrealなGalleryの空間とvirtualなOnline Museumで同時開催いたします。
どうぞお楽しみください。

​<海外から>オンライン・ミュージアム限定展示

​特別寄稿

賢治からの伝言「未来圏から」の風

松田素子(編集者)

 2012年の初夏のことだった。東日本大震災の津波で地域ごとさらわれてしまった仙台市閖上地区の子どもたちに会うという機会を与えられた。岩手県で「宮沢賢治」をテーマにしたイベントを開くから、というのは口実で、仮設住宅で暮らす方々に、ゆっくり温泉につかってしばしの間でもくつろいで欲しいというのが企画者の本当の意図で、家族みんなでやってくるから、子どもたちの前で何か賢治の話をしろというのが私への依頼だった。

 引き受けたものの、あんな体験をした人たちの前で、何を話せるというのだろう。考えれば考えるほど、自分が言うかもしれない言葉の空虚さを思い知らされ、結局私は、「話すことは、できない」と覚悟を決めて、話す代わりに一人一人に手渡す小さなファイルを作った。青い表紙に緑色の紙を貼り、そこに「ジョバンニの切符」というタイトルをつけた。そして副題として、小さく「――宮沢賢治からの伝言――未来圏からの風」という言葉を添えた。

 そのファイルの中に入れたのはどれも、私自身が励まされ、問いかけられ続けてきた、賢治の様々な言葉である。そして、この中に入れたひとつが「生徒諸君に寄せる」という詩だった。「未来圏」という言葉は、この詩の中にある。引用しよう。

  諸君はこの颯爽たる

  諸君の未来圏から吹いて来る

  透明な清潔な風を感じないのか

 賢治は、編集者の私にとって、その絵本化に取り組み続けている作家であると同時に、私自身の人生の恩人でもある。私は賢治の言葉にどれほど背中をおされてきたかわからない。

 賢治が生前唯一出版した童話集『注文の多い料理店』の序文にこんな言葉がある。「これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。」――この言葉は、私にとってずっと握りしめている切符のようなものだ。賢治は、自分の言葉が誰かの食べ物になることを、すなわちエネルギーになることを願っていた。そのことに胸が熱くなる。

 そして現在、コロナという暗雲が世界を襲った……。しかし、立ち止まったからこそ見えてきたこともある。新たな未来を見すえて歩き出そうとする人たちもいる。「未来圏」という言葉が、その眼差しを照らすエネルギーになるとしたら、賢治はきっと喜ぶに違いない。

私たちはこのパンデミックの渦中に生きるものとして、3ヶ月の準備期間を経て、2020年特別企画展「未来圏から!」をスタートいたしました。
86名の国内外作家が参加する、7/18(土)― 8/19(水)にかけての1か月間におよぶ展覧会です。

 

今回の招待作家には宮沢賢治のメッセージに対する応答として、今という時代を生きる作家自身の言葉が添えられています。それは会場でも掲示されていますがオンライン・ミュージアムでは掲示作品に添えられ、ズームアップして「見る」また「読む」ことが出来ます。

 

私もテストアップを視だして長く惹きつけられ、心が静かに揺さぶられました。それはあたり前のことです。いままで経験したことのない「宇宙の時空」に、私たちはみな「ひとり佇んでいる」のです。表現者としての自負も吹っ飛ぶような未来圏!で自答する作家のことばは「ともかく美しい」ことに撃たれます。
誰もが自ら選び取ることはない、今というパンデミックという危機。そこで露わになる人としての本質。
それが表現者であれば問いの刃は自らへと向かう。何度も繰り返しまずはここへ立ち返ろう。

島田誠

​参加作家

足立朱麻  石井一男  泉昭人  稲垣直樹  井上祥子  井上よう子  岩井博石  上住雅恵  植田麻由  上野陽子  植松永次  上村亮太  

内海聖子  烏頭尾寧朗  梅田恭子  大槻和浩  aune  大森翠  岡田久美子  小曽根環  落直子  貝塚理佐  加川広重  片山みやび  

金井和歌子  金子善明  河合美和  川島猛  川端祥夫  岸塚正憲  きたむらさとし  日下部直起  栗田紘一郎  コウノ真理  榊原メグミ

笹田敬子  佐藤有紀  沢村澄子  重松あゆみ  杉本裕子  高木さとこ  高澤圭多  高濱浩子  垂野紘行  築山有城  坪田昌之  坪谷令子  

中山トモ子  根垣睦子  旗谷吉員  花井正子  林哲夫  韓由美  東影智裕  東影美紀子  平田達哉  福島千佳  藤飯千尋  フジモトアキコ

藤原志保  Pen²  細井美奈子  細馬千佳子  前川奈緒美  増田寿志  松井鮎子  松岡美子  松原政祐  mapu  三浦孝宣  南輝子  MOTOOKA U.   森脇正奈  谷中亜紀  山口砂代里  山口よしこ  山口力靖  山村幸則  横道佑器  渡辺信子  WAKKUN

 <海外から>

斉藤祝子  辻井潤子  長谷川さおり  Max Kong  松塚イェンセン哲子

(86 artists)

実展示について

 

7月18日(土) ―8月19日(水)  

ギャラリー島田 B1F un & 1F trois にて開催中

 

会場風景はホームページにてご覧いただけます

http://gallery-shimada.com/?p=6860  

 

展示作業の様子などはスタッフブログにてご覧いただけます

http://gallery-shimada.com/blog/?p=9802  

 

​​未来圏から!への参加作家の想いを一部掲載しています画廊通信8月号も
ブログからご覧いただけます
http://gallery-shimada.com/blog/?p=9840  

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